ナバホラグの話

Native American

久しぶりの更新ですが、こちらニューメキシコ州は感染者の数がぐっと減り、少しずつ移動する人が多くなっている実感があります。暖かくなり出かけたい季節。

先々週からカジノがオープンし、カジノが稼働するその大きな駐車場で同時にワクチン接種が行われているというちょっとちぐはぐな光景も目にしました。来週から映画館もオープンするとのことで、続々と外に出てる時間が増えていきそうです。

 

さて、少しストップしていたナバホラグ織りを久々に再開しました。いろいろなナバホラグの資料を見ていて、少し歴史的な所に触れたので書いておきたいと思います。

こちらにもナバホラグについて書いてます。

時給では計れないナバホラグの価値
こんにちは! 最近はめっきりホームティーチャーをし、夜な夜な仕事。まだ仕事という存在があるだけありがたいのですが、すべてが親にかかってくるこのオンライン教育が本当にいつまで続くのかちょっと不安になってきました。(今のところ11月まで)...

ナバホラグの歴史

 

 

 

ナバホ族の作ったラグというのは、インディアンジュエリーと同じようにコレクターがたくさん存在するアート作品です。

ナバホラグというのは、「産業革命」、「工場生産」、「機械化」という波に一切乗らずに今でも手で作られています。

 

インディアンジュエリーの流行りと同じように、すでに80年代にはたくさんのコレクターが存在して、ナバホラグに関する書籍もかなり発行されていました。

そもそもナバホ族がラグ織で有名になったのはなぜか。

歴史的には、スペイン人が持ち込んだという説、リオグランデのプエブロ族がナバホ族に伝えたという説があり、後者のプエブロの人たちから伝わった説の方が一般的には知られています。スペイン人が作っている織物はナバホ族の垂直織ではなくて、横型の機織り機のタイプ。これはチマヨラグとかに見られ、これもニューメキシコ州を代表する織物になっています。

上記は、白人さんや私たち日本人がナバホラグの歴史を説明する文章。

ナバホ族では、「スパイダーウーマン」によって伝えられた。と説明します。

「スパイダーウーマンがナバホ族の女性に織物の織り方を教えたので、スペイン人から伝わったわけでも、プエブロから伝わったわけでもない」というのがナバホ族の人々の考え。

このスパイダーウーマンと言うのは頭がクモで体が人間とかそういう神話的なものではなくれっきとした女性だと言われていて、彼女が一つの氏族にナバホラグの織り方を教えました。

このナバホラグづくり、本来は羊の毛を刈るところからスタートするわけですが、すべての工程にたくさんの意味が込められていて、ラグを織ることは子供を産むことの象徴だとされています。なので、ナバホラグの作り手のほとんどが女性。一目一目織っていくことは、子供の細胞を作っているのと同じことだと私のナバホラグの先生も話していました。

ジュエリー作りと同じように、それに込められた意味や一部の作り方は家族内でも秘密にされることも多く、おばあちゃんが織っているけどやり方を教えてくれない、などはよく聞く話。

今ではジュエリー作り同様、誰でもが織り手になれる時代になりましたが、伝統的な信仰が詰まったこのナバホラグは織る前に祈りをささげたり、これから織り手になる子供には特別な儀式をしたりする人もいたようです。

なぜナバホ族のラグなのか

ネイティブアメリカンの部族は、それぞれがそれぞれの役割を持つと信じています。だからクリエイターと呼ばれる創世主が、それぞれの部族に役割を与えた。

ナバホ族は、ラグ織りとシルバーワーク。ズニ族は陶器とインレイワーク。ホピ族はバスケットとオーバーレイ。サントドミンゴ族はヒシ。アコマは陶器。

それぞれの部族が違うものが作れるようにして、バランスをとっている。実際に部族同士での物々交換(トレード)は今でも本当によく行われていて、例えばサントドミンゴ族のヒシネックレスとナバホ族のラグを交換する、という光景は今でもよく見られます。

ナバホラグはジュエリーよりも歴史が古く、1700年代には始まっていたと言われています。木に縦糸を巻き、横糸を通していくという伝統的な手法で暖を取るためのブランケットを作りました。自分たちが温まるためのブランケットから、馬のサドルブランケットになり、そしてトレーダーの活躍によってさまざまな柄が新しく市場に出回るようになり、アートとして確立していきます。

ナバホラグがこれだけアート作品として確立していった背景には、「トレーディングポスト」の存在がかなり大きいです。もちろんこれはジュエリーも然りですが、作り手はトレーディングポストに持ち込むことができ、それを食料に変えることができるためにラグを作り続け、トレーダーが新しい柄を提案してそれを織り込んだ作品を、トレーダーが自ら旅行者に説明して売っていく。

トレーダーの存在ってやっぱり後々になって偉大になっていくよなぁ、、、頑張ろう。と思わせてくれます(笑)

 

世界的にも地産の羊毛を使った織物と言うのはたくさんありますよね。個人的にはトルコのキリムが大好きなのですが、こういうものって本当に「工芸品」になっていく未来ばかりで、「実用品」とはどんどんかけ離れていっている気がします。

賃金が上がり、効率化が進み、新しい技術がどんどん出てくる中でまだこのスタイルで織物を作っているという地域がどれだけあるんだろう。。。

今日はショップに行って織りの道具を少し新調したのですが、そういう織りの道具もちゃんとナバホの人がハンドメイドで作っているんですよね。(おばあちゃんの織り手さんは自分で作った道具を使っています。)道具に込められた思いとか、柄に込められた祈りとか、そういうものが機械で織られた安くて大きなラグとはもう全然別物ということに改めて気づかされた今日でした。

 

どこでもなんでも簡単に安く買える時代になったからこそ、同じお金をどこに費やすかというのを改めて考えたいと思う最近です。

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