ターコイズのカットについて

Indian Jewelry

コロナ禍、緊急事態宣言下で、新しいことを始めた方も多いのではないでしょうか。私は実は、5月ごろからターコイズや他の石と格闘することを始めました。

経験あるのみのインディアンジュエリーメイキング。シルバーワークはプロがわんさかいるのでやる気にはならないのですが、救えるはずの貴重なターコイズがただヒビが入ってしまったからと言っておさらばするのがとても悲しくて、色々と勉強しています。

石を形にするプロセス

 

こちらはブラックウェブキングマン。

冒頭のバケツに入ったものはターコイズの原石で、それを鉱山主やトレーダーから買うところからターコイズジュエリーは始まります。

バケツに入ったラフの石は、アリゾナ州キングマンの鉱山主が持っていたものです。それを吟味して原石を購入して、その原石をスライスし、形をどんなふうに取るかを描いています。

石のカットのステップを簡単に羅列します。

1.原石をスライスする

2.後ろにバッキングをつける

3.バッキングの後ろにくぎをつける

4.削って整形する

5.磨く

こうやって書くと簡単に見えますがこのステップは早くても一週間ぐらいかかり、そしてその上完璧で美しい石が出来上がる可能性はとてもとても低い!こうやってジュエリーにセットされるターコイズのキャボションが完成するんですね。

石を実際に削ってみて、石をそのまま選んで買うことの簡単さを痛感しています(笑)

ターコイズの買い方
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ナチュラルターコイズの難しさ

これはナチュラルナンバーエイトを整形し、これから磨きの工程に入る前の段階です。磨きのプロセスは終わりのない果てしないプロセスなので、この段階からよし!と気合をいれないと進めません(笑)

 

〇中が分からない

ステップ1の石のスライス。原石は、カットしてみるまで中がどうなっているのか分かりません。もうそれは感覚と嗅覚と経験のみ。外側が美しくスパイダーウェブが入っていても、中がボロボロっていうことも多々。

さらに、スライスの仕方次第できれいにウェブが出る部分をカットできるかどうかも分からない。ターコイズを掘ることももちろん、ターコイズの原石を選ぶことも完全にギャンブル。有名な鉱山から出たと言っても、すべてが美しい石なわけではありません。

 

〇硬さが足りない

ステップ2のバッキング。ナチュラルのターコイズは硬さが足りないことが多いので、パテのようなバッキングをつけます。スライスしている時点で硬さが足りなくてすべてボロボロと崩れ落ちてしまう原石もたくさんあります。(このようなターコイズが、通常はスタビライズ加工されて強度を上げて市場に出されます。)

それでも「自然である」「樹脂を加えていない」という背景はとても大事なので、みんな頑張ってキャボション型に整形していきます。ナチュラルのターコイズはその中に入っているインクルージョンやマトリックスも自然なものなので、磨いていると中のマトリックスに入っていた岩や鉱物がボロッと抜け落ちてしまうこともありますし、少しの衝撃でクラックと呼ばれるヒビが入ってしまうこともあります。

 

〇無駄が多い

スタビライズ加工されれば、どこをスライスしても石がボロボロと崩れて無駄になることはありません。が、上記のようにナチュラルターコイズを整形していくことはギャンブルであり無駄ばかり!

さらにスタビライズ加工してあると、プラスチックを磨くのと同じなので研磨も実はとても簡単。ナチュラルの石はこの磨きの工程に果てしない時間がかかります。

6個の粗さの違う磨きを順番に、粗いほうから細かいほうへ少しずつ少しずつ加工していき、最終的な磨きへと移行していきます。

最後に、拡大鏡で見てカットにムラがないかどうか、さらにジュエリーとして使いやすい形に加工していきます。

 

ターコイズがまるでプリンのようにぷるぷるに見える素晴らしい職人さんもたくさんいて、石の良しあしだけではなくカボションを見ればカットする人の技術までも垣間見ることができます。

 

このような事実を知ると、市場にスタビライズターコイズがどんどん出回る理由が分かると思います。加工するほうも、身に着ける側もリスクが少ないしとても安定して供給ができます。

 

冒頭に写真を出したキングマン鉱山、現存しているアメリカのターコイズ鉱山では一番大きい鉱山ですが、そこからとれる原石の90%以上がスタビライズ加工されています。値段は高く売れるナチュラルターコイズですが、それだけナチュラルで加工できるグレードのものは採掘されないということですね。

 

大地からとれたターコイズ。スティーブは値段が安い高いというよりも、自分でターコイズを加工して作っているというところにとても誇りを持っています。

素晴らしいハイグレードターコイズがずらりと並ぶインディアンジュエリー屋が多い日本にいるお客様は、ターコイズにとてもうるさい!(笑)まず、そのナンバーエイトやビズビーは1970年代のものであり、もう原石は手に入らないということを忘れがちです。

ターコイズの価格は上がっていくことは目に見えていて、そしてハイグレードはどんどんレアになっていくことも確実に起こる未来。この10年で、今までどこにでもあったあの空色のターコイズもほとんど見られることがなくなってきました。

美しい石を保存しながら、そしてジュエリーにもっと輝きを与えられるように私は石の研磨や無駄になったターコイズと石の加工を考える日々です。

 

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