アルコールとネイティブアメリカン

Native American

こんにちは。

私たち家族の今を知る人から、かなりの反響があった第五章

第五章 ニューメキシコ州にいる現在
ニューメキシコ州は完全なる第二波で、再びレストランの店内飲食禁止のお達しが出ました。少しは落ち着いてくれないと、店もまた閉めなきゃいけない状況になっちゃいそう。 とにもかくにも会いたい人に直接会えない状況が、早く改善するといいです。 ...

 

過去の記事でも何回も触れているのですが、今一度アルコールとネイティブアメリカンの現状というものを調べてみることにしました。今回も結構ダークな情景が浮かぶと思います。

スペイン人と白人の入植に深くかかわる今の問題

ネイティブアメリカンと依存症
こんにちは、今日はちょうどタイムリーな話題⁉ ネイティブアメリカンと検索して、必ず出てくる言葉「アルコール、ドラッグ依存」 アル中が多い ドラッグ依存が多い ネイティブアメリカンと検索して出てくるぐらいなんだから、人数は多い...

こちらの記事で、アルコール依存やドラッグ依存は皆さんが思っている以上に普通の、日常的な問題ですよという現状を書いています。

「アルコールとネイティブアメリカン」という題でウィキペディアのトピックとなるほど、ネイティブアメリカンと言えば○○というのにアルコールは欠かせないような、本当にそんな感じです。

よくネイティブアメリカンは古代からお酒を飲む習慣がなかったから、お酒に飲まれるという話を聞きます。その真実はどうなのかと思って調べてみました。

820年から1100年、チャコキャニオンでトウモロコシを使ったビールが作られていたことが確認されています。

世界遺産チャコキャニオン
歴史建造物はロマンを感じて大感動するんだけれど、私は数字に弱く、記憶力がとにかくないので一回行ってもすぐこれが何の建物だったかとか忘れてしまうんですよね。 風景だけじゃなくて歴史もちゃんと記憶できる人になりたい(笑) とうわけで...

うちから1時間半のナバホネーションの中の世界遺産となっているチャコキャニオンは後1400年代にメキシコのアステカ文明とも関わり、そこで物々交換が行われていたことが証明されています。そこからアガベを使ったお酒やサボテンを使ったお酒も使われていました。

その頃のお酒の役割は、儀式用。若者が成人になる時の儀式などで、覚醒して精神世界とつながるという目的がありました。

日本のお神酒とシンクロします。

幻覚をもたらすといわれるサボテンの実などと同じように、儀式で夜通しお祈りし歌う時にお酒を飲み精神世界とのつながりを得るために使われていて、そのセレモニーのための神聖なお酒でした。

(今でも本来は神聖とされる儀式の裏で、飲みつぶれてしまう人というのがたくさんいます)

それが変化したのは14世紀ごろ。

スペイン人が入植してきて、ラム酒やほかのお酒が持ち込まれます。

もともと内向的で、社交的ではないネイティブアメリカン。スペイン人や白人と話すときに彼らの文化でお酒に付き合うこともあっただろうし、飲まさせることもあったと思います。セレモニー用だったお酒は、社会交流のための道具となり、社交的ではないネイティブアメリカンにお酒を足すことでコミュニケーションを図るツールになっていきました。

トレード(物々交換)をするときに、動物の皮とラム酒がされたという記録もあります。

1700年代からは政治的な取り決めにもお酒が関わってきます。

ネイティブアメリカンとの戦いを始め、入植者はアルコールを与えることでネイティブアメリカンの文化を腐敗させると信じていました。

実際にアルコールで、狩りの力は弱くなり、村の経済は弱くなり、貧困を招いていきます。

1753年にベンジャミンフランクリンが条約を結んだ時、アルコールを与えることでネイティブアメリカンがどんなに滑稽だったかという手記を残しています。

その頃からネイティブアメリカンがアルコールでダメになるというのは知られていて、1847年に一旦ネイティブアメリカンへの酒類の販売が禁止されます。

しかし禁止されてもその売り上げが衰えることはなく、時すでに遅しということなのか、そんなこんな歴史を経ながらそれぞれの部族がそれぞれのルールを設けてアルコールと向き合っていきます。

そのルールは今でもひきずっていて、基本、ナバホ族もホピ族もズニ族も、アルコールをリザベーション内で飲むことは禁止されています。

ギャラップの町では日曜日にはアルコールの販売はしていませんが、アルバカーキでは日曜日の昼12時以降であればお酒を買うことができ、それぞれの町や自治体で違うルールがあります。(日曜日は教会に行くからというのも理由の一つ)

 

データで見るアルコールの問題

アルコールの問題は本当に身近なんですよと書いても、なかなか伝わらないと思います。

現在も深刻な社会的問題となっているその現状をデータで見るため、簡単にネイティブアメリカンとネイティブアメリカン以外を比べたデータをずらーっと並べます。

〇アルコールやドラッグに起因する死亡率 11.7% それ以外5.9% (2倍)

〇肝臓に問題を抱えている人の率 3.9倍

〇アルコールやドラッグに起因する交通事故率 3倍

〇アルコールやドラッグに起因する自殺率 69% それ以外21.5% (3.5倍)

〇FASDs(妊娠中に母親が摂取したアルコールによる胎児性アルコールスペクトラム障害) 1000人中1.5人から2.5人(アラスカネイティブ5.6人)(それ以外の7倍)

〇一年以内にアルコールを適正に使用できなかった率 43.4% それ以外14%

〇アルコール中毒の中でも、過剰摂取をしてしまう人の率 29.6% それ以外25%

〇アルコールを軽くたしなむことができる人 白人32.7% ネイティブアメリカン14.5%

〇アルコールを飲み始める平均年齢 14歳 それ以外18歳 

 

こうやって比べてみるとなかなかすごい数字。でもこれを見ると、ネイティブアメリカンが、「飲む人」と「飲まない人」できっぱりと別れる理由が少し分かりますよね。

ネイティブアメリカン全体で、13歳でお酒を飲み始める人の率は13.8%。16歳になると67.5%にも上り、若い子は6歳で飲み始めるという記述もあります。これは明らかに家族の影響ですが、それが原因で学業不振を招き、貧困に陥るという負の連鎖。

アルコール依存の治療施設の中で、妊娠中に飲酒したことのある女性の確率は73%に上るというデータも見つけました。当然、アルコールやドラッグに起因する性的暴力、家庭内暴力も多く起こっています。

アルコールを飲む理由としてあげられるのが、「悲しみを抑えるため」「現実から逃避するため」

何もしなくても生きていけ、生きる楽しみが見いだせない、その心の空虚を埋めるためにアルコールに逃げる、みんなが飲んでいるから飲み続ける、そういう人たちが多いです。

 

まとめ

なんだか暗く終わってしまいましたが、そんな歴史を含め、今の現実があります。

もともとは神聖なものであったお酒がネイティブアメリカンを制圧することに使われ、依存させることで利を得ていた人がいるという過去。
現在もドラッグがそういう使われ方をしているのと同じ。

あの人はアル中でホームレスになっちゃってね、、、なんて話もよく聞きます。バーやカジノではしょっちゅう警察が出動しているし、今日は朝からウォルマートの駐車場でそういう人たちがでっかいケンカをしていました。だからこそアルコールを飲む人と飲まない人では天と地の差のように思われがち。日本人でも、自分が飲みたいからと言ってお酒を会話の中心にすることができないのはそういう理由があります。

駐在3か月目ぐらいの頃、近所の白人さんにバーに連れて行ってもらったのですが、店内でナバホの人がケンカをはじめ店にいる全員の客が店から締め出されるということがありました。

その頃はまだ何も知らなかったので「この店ひどすぎ」と思ったのですが、本当にそんなことはしょっちゅうあるので、バー側も大変(笑)

ネイティブアメリカンにとって、「たしなむ」ことは本当に難しい。だから、きっぱり辞めるという決断をする人が多いんですね。

アルコール依存、ドラッグ依存はネイティブアメリカンだけではなく世界中にある問題。日本人にとってお酒はコミュニケーションツールのように身近だけど、ネイティブアメリカンにとってのイメージは全く違う、そんな話でした。

本人の意思で抜け出せることではあるけれど、ただその人がダメ人間だと卑下して軽蔑するだけでなく、そこにはもっと深い根っこがあるというのを理解していただけたら嬉しいです。

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