週末は先日ブログに書いたラスベガスのNFRに行ってきました。人は多かったけど、やっぱりたまに気分転換して都会に出るのもいいものだなと思いました。
それと同時に、たくさんの出展者やカウガール、カウボーイたちを見ましたが、「本物のインディアンジュエリー」を身に着けている人はごくごくわずかで、それっぽいファッションジュエリーを身に着けている人がほとんど、でした。
実は、
「日本よりも、アメリカの方がインディアンジュエリーを購入するお客さんの年齢層は高くて、アメリカの若者はインディアンジュエリーに興味がない人が日本よりも断然に多い。」
(ここの根本を変えていかないとインディアンジュエリーの未来はないと思う。)
理由を考えてみると、
値段が高いから本物のインディアンジュエリーには手が出ない。
本物のインディアンジュエリーって何かを知らない。
これが圧倒的だと思います。
どうしてインディアンジュエリーは高いのか。
まず、どうやってインディアンジュエリーの値段が決まるか、考えてみます。
1.素材
まずは地金の素材、シルバーか、金か、はたまたニッケルか。通常はシルバー925ですが、18金の場合もありますし、プラチナなんかを使う場合もあります。素材とその素材の量だけで、値段が圧倒的に変わってきます。ニッケルになると圧倒的に安くなります。
(価値低→高・・・ニッケル→シルバー→14金→18金→プラチナ)
そして次に、地金以外の素材。ダイヤモンド、ターコイズ、シェル。ダイヤモンドやシェルは市場価格はだいたい決まっていますが、知れば知るほど奥が深いターコイズの価値というものもインディアンジュエリーの価値を大きく左右します。
(価値低→高・・・プラスチック→スタビライズ→ナチュラル)
2.作家
誰が作ったか。すでに亡くなっている超有名作家が作ったものか、まだ名前の知れていないローカルの作家が作ったものなのか。(ピカソか、私が描いた絵か。みたいなものですね。)
3.技術
私が描いた絵でも、今までの画家が使ったことのないような技術で描いた絵なら、きっと高く売れるでしょう。そのジュエリーに使われているテクニック、技術、手法、“作家の名前を左右するのはここ” です。(ここは後にもっともっと掘っていきたいと思っています。)
4. 年代と歴史
新しいものか、古いものか。そのジュエリーに歴史はあるか。インディアンジュエリー自体に歴史があるので、「インディアンが作るジュエリー」というだけで、「日本人が作るジュエリー」よりもはるかにポイントが高くつきます。
5.生産量
どんなにすごい技術の作品でも、100個作れる作品と、1個しか作れない作品では、値段が違ってきます。工場生産や大量生産のジュエリーが比較的お手頃なのは大量に生産できるからです。反対に、個人の作家が作っている作品は、すべてが一つ一つ手作業で一人の手から作られているものです。
6. 販売場所
銀座のギャラリーで売るのと、ニューメキシコ州の田舎町で売るのは値段が違いますよね。土地の値段が違うから。
(日本酒で考えてみるといいかもってふと思いました。)
1.魚沼産コシヒカリを使うか、カリフォルニア米を使うか。
2.老舗の有名な酒蔵で作ったのか、個人が樽で作ったのか。
3.どんな技術を使って作られているのか。
4.新酒なのか、10年寝かせたものなのか。
5.1万本生産したのか、100本生産したのか。
6.店で売るのか、レストランで売るのか。
以上これらすべてを踏まえて、インディアンジュエリーの値段が決まります。
では、本物のインディアンジュエリーって何か
ピンからキリまであるインディアンジュエリー。
インディアンとは。
1/4以上の血筋がインディアンであれば、正式にインディアンとみなされ、Certified Indian Blood (CIB)という証明書が政府から発行してもらえます。 だから、おばあちゃんとかおじいちゃんがインディアンであれば、見た目白人でもアジア人でも、れっきとしたインディアンです。
そしてその、「インディアン」の人が作れば、なんでも、「インディアンジュエリー」なわけです。
偽物とは
「偽物」と呼ばれるものは基本、インディアンジュエリーをパクったデザインのもの。コピーライトがないデザインであればだいたい法的な問題にはなりません。そしてそれを中国産、フィリピン産、と言っていれば法的には問題なし。「輸入品」ではなく、「インディアンジュエリー」として偽って売ることが問題です。(これは2,3年前に大問題になり、FBIが捜査して輸入品を全部回収するほどの大騒ぎでした。なので今では輸入品をインディアンジュエリーとして売るお店は結構少なくなりました。でもまだ、そういうお店はあります。)
私が思う、本物
私が定義する、本物のインディアンジュエリーとは、
①シルバー以上の素材を使い、②スタビライズ以上の素材を使い、③作家の手によってハンドメイドで(ワックスキャストの大量生産を使わない)作られたもの。
ニッケルや銀メッキはNG、プラスチックの石はNG。(プラスチックは完全に石ではないけど、スタビライズは石に樹脂を入れ込んで強度をつけたもの。ここには大きな違いがあると思います。)
(でもこれらについて偽物のインディアンジュエリーだ!とは言えない。。。)
ワックスキャストについては、リングのシャンク部分に使っている人が結構いるので完全にNGとは言えないのだけど、ワックスキャストを使っていないものを買ってほしいなという個人的な、希望。
(ここら辺の専門用語については、サンプルがないと分かりにくいかもしれないので後々。またはググってください。)
お店もいろいろ
インディアンジュエリーを売るお店にも、本当に色々なお店があります。それは、上記理由でインディアンジュエリーに色々な価格帯のものがあるからです。安いものだけを扱うお店もあるし、超高級なレアなものだけを扱うお店もある。
要するに、何がワックスキャストかとかどれがプラスチックとか、そういうことをちゃんと説明できるお店で、それを理解したうえで買ってほしいということ。
(実は、そういう説明ができるお店って結構少ない。)
まとめ 思い入れのある買い物を。
ニッケルにプラスチックターコイズを使ったバングルを5ドルで買うか、シルバーでそれなりの作家のナチュラルターコイズを使ったものを500ドルで買うか。
それはあなた次第なのだけど、どちらの方に思い入れができ、どちらの方に愛着がわき、どちらの方を長く大切にするかを大事にしてほしいなと思います。
そしてもう一つ、今も作っている人の作品を買うことは、どこで買っても最終的に作り手の利益となります。ところがビンテージやユーズドのジュエリーを買うことは実はお店にしか利益にならない。(私もビンテージは好きだし、ユーズドも買う。でも作家のものを買ったときに、これが作家の利益につながっていると思って買うと、なんか、夢が広がるというか、もっと買いたくなるというか。)
アメリカに旅行に来て、インディアンの人たちや文化に触れたのに、買ったものは「中国産のそれっぽいもの」だったらあまりにも悲しい。(以前有名人がセドナの本を出し、その人が着けていたジュエリーがフィリピン産だった。たぶん本人は知らないで着けていたんだと思うけど、なんか悲しかった。)
私の夫がよく言う言葉。
「意味を知り、背景を知り、作家を知るとそのジュエリーはただの装飾品ではなく、特別なジュエリーとなる。特別なジュエリーになったら、そのジュエリーは自分が年老いたときに、子供に譲ることができる。でもただの装飾品はごみに捨ててしまうだけ。」
「値段が高い!」それはとてもとても大きな理由なのだけど、そこだけを見るのではなくて、その先にある価値をひっくるめて、相応の価値がついているということを見てほしいなと思います。
Photo by Ken Kanazawa
今回ラスベガスに行き、運命的に出会ったKenさんにジュエリーと家族の写真を撮っていただきました。アメリカの国立公園や自然の写真、ルート66の写真など、日本人でNO1の写真家の方。(写真はもったいないので小出しにしてきます笑)
これからまた新たな世界が広がりそうです。
アメリカ、ニューメキシコ州在住、居住歴10年。ナバホ族の夫とリザベーションで二人の子育てをしながらインディアンジュエリーにかかわる仕事をしています。インスタ、ツイッター、Facebook、Youtubeがありますがインスタが一番身近な感じかと。
ABOUT MEのページからSNSのフォロー、他ウェブサイト、お問い合わせなどができます。
コメント
素晴らしい!ナバホジュエリーの解説と私のご紹介感謝いたします。
ケンさんありがとうございます!