アーティストに任せるバランス

Indian Jewelry

イースター祭が無事に終わり、明日は月曜!

 

さて、今日はなんだかすごくいいことに気づきました。

アーティストとシルバースミス

インディアンジュエリーの世界って、知れば知るほど不思議で奥が深い。

毎日自分のスタイルの同じものを作り続ける人、いろいろなスタイルでとにかくたくさんの量を作る人、一年に何個かしか作品を作らない人、本当に千差万別。

私が思うには、「感性で作られた作品」と、「換金するための商品

がバランス良く作れるのがアーティスト。

この感性で作られた作品を作れるアーティストというのが実は結構少ない。

ここは「こだわり」とか「デザインのセンス」とか「探求心」とかがあるかどうかにかなり左右されてきます。

感性で作られた作品がそのまま100%換金するための商品となればそれに越したことはないけれど、現実問題そんな訳にもいかないので、バランスよく作品を作っていくのがものづくりの真髄。

なぜ感性で作られた作品が少なくなっているような気がするかというと、やはりそこはバイヤーやトレーダーの意思がとても大きく、「売れない感じがする」と「買えない」のでよっぽど激しいデザインを買うのは大きな賭けとなり、無難なもの、無難なもの、と移行していきます。

2000年代ごろまではそれでも、奇抜なものがいっぱいあったと思います。材料が安かったから、大きなものでもそれなりに今よりも安く作れたというのもありますが、そういうものでも「売ってやる」っていうバイヤーさんも多かった。

昔はアーティストの感性で作っていた作品を、近年ではお客さんやバイヤーさんからの提案に沿っての作品作りになっている人が多い。

もちろんそれをこなすのがプロなんだけど、5回に一回ぐらいは、アーティストの自由に任せていただきたいなと夫のジュエリー制作を見ていて思います。

うちの夫は、石に合わせてデザインを決めていくタイプ。完全なる職人肌なので、逆にこれと同じものでこの石使ってっていうのがどうも気が乗らない。

※もちろん、作りますよ。

オーダーはちゃんと仕上げるけれど、それとプラスで何か自分の自由に作れるものがあると、大変大変言いながらもすごく自分の作品に満足しているなと思います。

「アーティストをただ作品を作る機械にしない」

アーティストと、シルバースミスの違いはそこです。

ジュエリーを作る人全般が「シルバースミス」
自分のデザインでアートを作る人が「アーティスト」

キャンバスを自由に使わせる

 

そこで思ったのは、「キャンバスを自由に使わせる」という発想。

絵のサイズはこれぐらい、キャンバスで、アクリル絵の具で。はバイヤーが決めて、中は自由に描かせるということ。

画家に書く絵の指定をあまりしないようなイメージです。

ただただ仕事をこなす人じゃなくて、いいアーティストを育てていくには彼らのデザインと売れるものの感覚も育てていかなければいけない。

 

以前アーティストに石を渡してオーダーした時に、この石は使えないと石の一部を返されたことがありました。

自分の名前が入る作品に、「この石は十分じゃないから使えない」という意味

最初はそんなことをされるのは初めてだったので、「オーダーをあげている側」として、なんで?って思いました。

でも考えてみれば当たり前で、自分のスタイルを持っていれば持っているほどこだわりの多い職人になり、この人は素晴らしいなと思いました。

真っ白なキャンバスをあげたときに、喜んでいい作品を作れる人を増やす。

それが後々バイヤーを楽にしてくれます。

絶対にやってはいけないこと

最近よく聞くのが、他の人の作品の写真を見せて、これを作ってほしいと別の作家にお願いするという話。

サンシャインリーブスのリングの写真をプリントして、スティーブアルビソにこれ作ってってお願いするっていうこと。

もっと言えば、「ゴッホの絵をゴーギャンに見せて、これ書いてっていう」みたいなことです。

これは絶対にやってはいけないこと。どちらに対しても失礼で本当に嫌な気持ちをするアーティストがたくさんいます。

彼らは、自分の魂と歴史、誇りをもって自分のスタイルのジュエリーを作っています。

コピーされることにとても敏感で、自分たちも簡単にコピーすることはしない。

 

バイヤーとアーティストはそれぞれがあらゆる関係性で信頼関係を保ちながら、バランスよくデザインや作品をプロモーションし、チューニングしています。

まとめ

たくさんの作り手がいるからこそ、この人はどういう形でオーダーして行ったらいいものができるか、どういう形でプロモーションしていけばどちらもハッピーな形になれるかを見極めるのが難しい。

少し指定してオーダーしてもどこかに余白を残しておくと、彼らの作家しての感性も試され、磨かれていきます。

「アーティストをただ作品を作る機械にしない」

この感覚は均一な品質がいつでも手に入る現代社会にいると心の底から理解するのが難しいけど、後継者問題がとても深刻なインディアンジュエリー界だからこそ、アーティストの感性やセンスを磨いていくことも、バイヤーの重要な仕事です。

 

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