インディアンジュエリーのインレイ(象嵌)

Indian Jewelry

 

インレイとは

インディアンジュエリーの用語で使われる「インレイ」という言葉。「Inlay」

 

要するに、象嵌(ぞうがん)

象嵌は、工芸技法のひとつ。 象は「かたどる」、嵌は「はめる」と言う意味がある。象嵌本来の意味は、一つの素材に異質の素材を嵌め込むと言う意味で金工象嵌、木工象嵌、陶象嵌等がある。その中の金工象嵌は、シリアのダマスカスで生まれ、シルクロード経由で飛鳥時代に日本に伝わったとされる。

 

石を一つ一つカットして作るインレイのジュエリー。

 

インレイの工程

 

銀を成形してコの字がたの器部分を作る。

中に石をカットしてインレイしていく。

(様々な素材の石をカットし、接着剤で留め、カットし、留めるのを繰り返す。)

石部分を磨く

表面を磨き、シルバー部分を磨く

 

一つのジュエリーを作るのに、手間と時間が圧倒的にかかっています。

 

象嵌という技術はアジアにも古くから伝わっているので、日本でも貝や木などを素材としたインレイの技術というものがあります。

 

「手工芸」が「機械工業化」に代わる過程で、衰退していった伝統工芸の一つですが、まだ作っている職人さんはいます。

 

インディアンジュエリーのインレイの状況も全く同じです。

 

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この商品はどこまでが手で作られているものか。そんなことを考えたことはありますか?っていうか、そんなことを考えて物を買ったことはありますか?例えば洋服だったら、考えない人がほとんどですよね。手仕事、ハンドメイドだと高い...

工業化する意味がある

 

これはズニ族の伝統的なインレイの色味、モチーフは「ナイフウィング」と呼ばれる羽がナイフの形をした精霊。

 

一つ一つの石を細かくカットして作られています。

職人は作るのに慣れているとしても、素人が見てもこれが一日ではできないであろうことはわかると思います。

 

〇量がたくさん作れないので、売りにくい。

〇時間がかかるので、いつ入荷するかわからない。

〇作りにムラがあったり、壊れやすいものがあると修理のしようがない。

 

なので手間量に比べ、「あまり高く売れない」のが現実。

 

どこかのギャラリーで特集してもらって、自分の「アーティストとしての名前が知れた」人でなければ、自分で作品を作ってバンバン売ることができません。

 

一目で見て飛びぬけてデザイン性があったり技術がある人というのは、ギャラリーでも特集しやすく、売り出しやすい。

でもインレイの作家は技術やデザインが「一般的」で、一つのスタイルしか作らない人というのがほとんど。

こういったジュエリーはギャラリーとしても「作家の名前」で売るより「インレイのカテゴリー」としてまとめて売るしかないので、値段もそんなに高くは売れないわけです。

 

そこで、「白人やアラブ人が経営するインレイの工場」が登場します。

 

インレイの技術がそれなりにある人を雇い、インレイのジュエリーを作る工場です。

シルバー部分を作る人

インレイ部分を入れる人

磨きをやる人

と工程化して、コンスタントにインレイのジュエリーを作れるようにした工場がたくさんあります。

 

上記の、

〇量がたくさん作れないので、売りにくい。

〇時間がかかるので、いつ入荷するかわからない。

〇作りにムラがあったり、壊れやすいものがあると修理のしようがない。

 

という問題を解決して、

品質を一定に保ち「お店の名前の元で売る」ことができるようになります。

 

作家のものと工場のものを比べ「これは工場のものだからNG」というお客様が時々いるのですが、インレイ工場ができた背景にはこのような背景があります。

 

彼らが一般のインレイがそこそこできる人を雇うことで、技術を磨き、そこからアーティストとして旅立っていった作家もたくさんいます。

 

私が知っているギャラップのインレイの工場では、基本「ネイティブアメリカン」しか雇いませんので、管理しているのがアラブ人や白人であって、「インディアンジュエリー」であることは間違いありません。

 

※インレイの同じようなジュエリーでフィリピン産などが出回った時期もありますが、それはここニューメキシコ州のインレイの会社で作ったものとは全く別のものです。

 

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まとめ

これは、箱根寄木の象嵌の技術を使った作品。

 

インディアンジュエリーのことを考えているといつも行きつくのは「伝統工芸の未来」なので、必然的にいろいろな世界の伝統工芸の現状も見えてきます。

 

「時間がかかって安くしか売れない」ものを「どうプロデュースして高く売れるようにするか」が常々の課題です。

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